【曲紹介ばいおん】ローマの松
みなさんこんにちは!
演奏会の選曲から演出まで担当する企画係です!
来る12/15(日)富士市文化会館ロゼシアター大ホールで行われる
静岡大学吹奏楽団 第57回定期演奏会
今回は演奏会のメインを飾る
オットリーノ・レスピーギ作曲「ローマの松」について紹介します
『ローマの松』では、私は、記憶と幻想を呼び起こすための出発点として自然を用いた。きわめて特徴をおびてローマの風景を支配している何世紀にもわたる樹木は、ローマの生活での重要な事件の証人となっている。
レスピーギは、1926年、自らの指揮で本作を演奏するにあたり、プログラムにこのように記したといいます。
「ローマ三部作」と呼ばれるレスピーギの代表的な3つの交響詩のうち、『ローマの噴水』と『ローマの祭り』は実際にローマに点在する噴水や各地の祭りの様子を具体的に描写した作品となっています。
これに対して、本作『ローマの松』は単に樹木としての松の姿を書こうとしたわけではなく、
”松という自然を通して、古代ローマの栄えた記憶と幻影に迫ろう”という意図を持って書かれたとされています。そのため本作のなかには、グレゴリオ聖歌をはじめとする古い教会旋律法が使用されている箇所が見受けられます。
連続して演奏される4部からなる本作は、それぞれ異なった松とその時間・場所に対して、レスピーギの得意とする色彩的なオーケストレーションで効果的に表現されています
Ⅰ. I pini di Villa Borghese ボルゲーゼ荘の松
「ボルゲーゼ荘の松の木立の間で子供たちが遊んでいる。彼ら和輪になって踊り、兵隊遊びをして行進したり戦争したりしている。夕暮れの燕のように自分たちの叫び声に昂闘し、群れを成して行ったり来たりしている。」
元来、貴族の邸宅であったボルゲーゼ荘という公園の松並木で遊ぶ子供たちの情景を、ホルンの高らかな響きとにぎやかで派手なオーケストレーションで彩った速い旋律で描かれています。
Ⅱ. Pini presso una catacomba カタコンバ付近の松
「カタコンバの入り口に立っている松の木影で、その深い奥底から悲嘆の聖歌が響いてくる。そしてそれは、荘厳な賛歌のように大気に漂い、次第に神秘的に消えていく。」
明るい第1部から突如として情景が一変し、第2部へと移り変わります。
カタコンバとは、古代ローマにおける初期キリスト時代の墓のことを指します。この墓付近の松の木影から信者たちの悲嘆と祈りに満ちた聖歌が、深い奥底から徐々に大気に漂う様子が描かれ、最後には全オーケストラを駆使した和音の中で荘厳な賛歌のように再現され次第に神秘的に消えていきます。古代の教歌から影響を受けた連続するハーモニーによるメロディも見ることが出来ます。
Ⅲ. I pini del Gianicolo ジャニコロの松
「そよ風が大気をゆする。ジャニコロの松が満月の明るい光にくっきりと立っている。夜鶯が啼いている。」
ジャニコロとは、ローマ南西部にある丘のことです。満月の幻想的な光とその中に浮かぶ松という夜の情景が、ピアノとクラリネットの哀しいソロによって描かれます。曲の最後には夜鶯の鳴き声がどこからともなく聞こえてきますが、本作の初演時には、鳴き声を録音したレコードを再生した、と言われています。
Ⅳ. I pini della via Appia アッピア街道の松
「アッピア街道の霧深い夜明けとそれを見守る松。果てしなく続く静かな足音のリズム。詩人は、過去のローマの栄光の幻想的な姿を浮かべる。新しく昇る太陽を模したトランペットの響きの中で、執政官の軍隊が街道を前進し、勝ち誇った姿で登っていく。」
現在もその姿の残るアッピア街道の石畳は、かつて古代ローマの進軍道路として使われていました。その「軍隊の行進」を表す足音のリズムは、ティンパニや低音群によって絶えず再現され、ピアニッシモから徐々に音量を増し、曲のクライマックスにはフォルテッシモにまで至ります。
さらに舞台上の管弦楽に加えて、客席の脇や後ろ、2階席に配置されたバンダのファンファーレも加わることで、古代ローマ軍の進軍とその勝鬨の光景が立体的に広がり、立体的な音響を響き渡らせながら勇壮に全曲を閉じます。
このように、この曲には、ローマ各所の松とその背景が細かく描写されています。
また、レスピーギの作品は、原曲はもちろん、吹奏楽編曲でも色褪せない色彩感あふれるオーケストレーションが特徴的で、過去の演奏会でも「ローマの祭り」や「シバの女王ベルキス」などを取りあげてきました。
1924年12月に作曲されたとされており、今年でちょうど100年を迎える本作。
ぜひ、12月15日(日)は富士市文化会館ロゼシアターを訪れて、静岡大学吹奏楽団の集大成、そして激アツな「ローマの松」を聴いてみてはいかがでしょうか!
書いた人:🎧