【サマコン曲紹介ばいおん】ラッキードラゴン〜第五福竜丸の記憶〜

みなさんこんにちはこんばんは!

いよいよ今週末に迫ってきたサマコン2022、その曲紹介も今回で最後!最後に紹介するのは「ラッキードラゴン〜第五福竜丸の記憶〜」です。

作曲者は福島弘和さん。「シンフォニエッタ」作品など数々の吹奏楽曲を作曲されている方です。中高生にも人気のある曲も多く、この曲も聞いたことのある方は多いのではないでしょうか……?

さて副題にある「第五福竜丸」ですが、これはとある漁船の名前です。かの船は静岡県の焼津でマグロ漁船として改修され、そして1954年、太平洋のビキニ環礁付近で操業中にアメリカの水素爆弾実験に巻き込まれて被曝しました。

第五福竜丸ほか1400以上の船が被曝することとなったこの事故は、焼津などでの風評被害、全国的な反核運動をはじめとしたさまざまな社会運動を巻き起こしました。

そして1957年からアメリカの画家ベン・シャーンがこの悲劇を元に連作絵画を制作し始めます。題は「ラッキードラゴン」、この曲のタイトルはここから取られています。

さらに2006年、アメリカの詩人アーサー・ビナードがこれに文を書き、「ここが家だ」という絵本にしました。

そして2008年、春日部共栄高等学校の委嘱により、この絵本を元に本曲を作曲しました。

絵画→絵本→吹奏楽曲、と過去の悲劇を忘れないようにというリレーが、この曲を生み出すことになったんですね。

ここからは曲の中身について。

曲は5部構成になっており、それぞれに題がついています。冒頭から順に「悲しみ 嘆き」「西から昇る太陽」「不安 怒り」「祈り 昇天」そして「希望 ラッキードラゴン」です。福島さんは前半4部は史実に基づいて、そして最終部は「船の魂が本当の意味での『ラッキードラゴン』となって天に昇っていくイメージ」で書いたとし、曲全体を通してストーリー性が強い曲となっています。

例えば冒頭、「悲しみ 嘆き」でのクラリネットソロですが、主題の一つでもあるこちらは曲後半でも再登場します。しかも冒頭のソロでは美しくも悲しげに、後半の「祈り 昇天」では祈るように、そして最後の「希望 ラッキードラゴン」では温かく重厚にと、それぞれの場面にあった雰囲気で再現されます。

そしてこのソロの前後にある木管の儚げなメロディーと、不安を煽るホルンのモチーフもその後の曲の中で何度も出てきます。込められた想いによって色や形を変えて現れる旋律の数々に、曲の持つストーリー性、メッセージ性が表れているような気がします。

 

作曲者の福島さんはこの曲に対して「演奏する方にも、それを聴いてくださるお客様にも何かを感じていただき、『福竜丸の事実を忘れてはならない』という輪が広がっていってほしい」というような言葉を残しています。絵画→絵本→吹奏楽曲 と続いてきたリレーを次は私達が「→奏者」そして「→お客様」と続けていけるよう、そんな演奏を皆様にお届けできればと思います。

というわけで最後にいつもの宣伝!

場所:掛川市生涯学習センター

日時:7月10日(日)

開場13:15 開演14:00

前売りまだ間に合います!

是非お越しください!皆様のご来場をお待ちしております!

書いた人:前回に引き続き ぴょん